君の名は希望

優馬くんの名前は希望と今 知った

偽義経冥界歌、閉幕。

本当なら、私は今週末福岡にいるはずだった。博多座の前に壮大に構えられた冥界の扉をくぐるはずだった。はじめての博多座にワクワクしてるはずだった。なのに、私は週末をパジャマのままココアを飲んで過ごしている。

悔しい。会いたかった。でもしょうがない。行き場のない気持ちが未だにグルグルと行ったり来たりしています。関係者の皆様はもっとだろうな…。大変な状況の中、公演に向けて万全に準備をしてくださったのに中止の判断。でも危険を避けて命を守ってくれたおかげで、健康で、昼まで寝てココアをすすりながら好きなアニメとドラマをひたすら見れています。(それを健康的と言うのかは分かりませんが…)なので本来なら冥界にいるはずの時間に、感想を書こうかな。


まず私は平成版偽義経を2回、令和版偽義経を1回の計3回観劇しました。4回目は果たせず、福岡は未踏の地となり、博多座に彷徨う生霊になりそうです…。あ、あと再開した日のライブビューイングを映画館に一日籠って観たので、それを含むと計5回ですね。
そして初劇団☆新感線。斗真くんがヴァンパイアの時も、グルグル回り始めた時も気にはなっていた。行こうと思えば行けた、髑髏に至ってはチケットも譲ってもらえた(事情により断念)そんなすぐ近くまで来ていた(?)新感線に、私は幸運なことに優馬くんと一緒に初乗車することに相成りました。ずっと気になっていた劇団に、応援し続けた担当が出演する。しかも一年もかけた大きな公演に。あの発車ベルが鳴った瞬間の嬉しさは絶対忘れないと思います。


初めて見る劇団☆新感線は、新しい感覚と今までにない体験の連続でした。開幕してすぐに書いたブログでも言いましたが、とにかく場面展開のスピード感が凄かった。いろんな技術を駆使して、駆け抜けるような物語にドッと疲れました(褒めてる)セットの転換だけでなく、映像も使って、状況や場所が変わったことを観客にすぐに把握させる、まるでテレビを見てるようなシーンの切り替わりに圧倒された。グルグル回ったり、色々なキャストと作り上げたりして今まで築いた地盤の強さを見せつけられて、そこに優馬くんが立っていることが嬉しくてしょうがなかったです。


でも思うんですよ、初めての新感線が偽義経冥界歌って、私はとんでもないもので処女を捨ててしまったのではないかと…。だってあんなに分かりやすく陽の性質を持った人を主人公にしておいて、勧善懲悪の物語に収めずに孤独を与えるなんて…。人間のエモーショナルな部分をこれでもかと詰め込んだ業の深い脚本すぎるよ…。人間の強欲さや、良し悪し、矛盾をすべて舞台にばらまいて、最後はそれを拾い集め魅力として輝かせ、生き様に変えて抱きしめてくれる…凄すぎる天才の所業だ…。


最終的にどうしようもない人たちもみんなみんな愛しくて、カッコいいヒーローたちの弱さも一緒に抱きしめたくなる宗教みたいな物語だった…。最初にして自分の好みの舞台と出会ってしまって、こじらせそうで怖い…。(たぶんもう手遅れ)

中島かずき先生については全くの無知なのですが、初めて見たあと、
毎回こんなの書いてるの???今までのものをかき集めた集大成じゃなくて???劇団☆新感線ってカッコいいヒーローが派手に暴れまわって悪をくじくっていうイメージだったから、こんな一筋縄ではいかない物語想像していなかったけど、もしかして新感線ってこっちがスタンダードなの???根幹はこれなの??だとしたら性癖ゴリゴリに刺激されるやつじゃん…(※ここまで息継ぎなし)
と席から立てずにボーっとしました。なんていうか、脚本からとんでもない力強さと深みを感じて、なんかもうずっと殴られてるみたいだった。

そしてこれまたものすごい相性なんですね、いのうえ歌舞伎が。
繊細な人間描写と、深い死生観が流れる脚本に、豪快で分かりやすい演出。でも決してお互いを邪魔しない、相性ってこういうことなんですね、とすぐに察した我。お互いの良さや主張を壊さない絶妙なバランスで紡がれていく舞台に、ものすごい緻密さを感じてこれは積み重ねないと出ない色味なのだなあと何も知らない私でも感じ取りました。いやあ、すごい。いのうえさんと中島さんのタッグすごい。私のミジンコ語彙力じゃ追い付かない…。さっきも書いたけど、この作品に出演した優馬くん本当持ってる。だってめちゃくちゃ合ってるもん。顔に物語性がありすぎるから、単純じゃない方が合ってるもん。キャスティングすら素晴らしいってすごいね…。

ちょうどキャスティングに触れたので、そのままキャストの感想を。
これこそ書き終わらないんですが登場人物あんなに多いのに深みありすぎでは?????テレビと違って、フォーカスを好きなところに当てられる舞台で、一人ずつに感情移入できるのって凄すぎる…。緻密な脚本と演出の賜物なのは前提ですが、演じる皆様の役への理解度がものすごく高いので、見ていてすごく気持ち良かった。脚本、演出、演者が三位一体となって突き詰めると、こんなにも純度の高い作品になるんだな、と見ていて物凄く感じました。

そもそも一人一人のキャラデザが良すぎる。衣装もそうだし、長髪ビジュアルも美しさに拍車をかけていて掛け算が素晴らしい。視覚からそもそも楽しいって素晴らしい。奥華の一族なんて彫深遺伝子すごくないですか。秀衡、玄九郎、次郎の親子めちゃくちゃ説得力ある…そして品のある黄泉津の方から生まれた次郎もめちゃくちゃ分かる(黄泉津の方から玄九郎は生まれなさそう)顔面黄金の一族が、黄金変生してるんだからそりゃ黄金も大往生だよな…(?)


私は腐っても優馬担なのでやっぱり次郎ちゃんが一番輝いて見えたんですけど、色眼鏡なしにしても絶対顔ちっちぇよな?!烏帽子の小顔効果が仕事しすぎだよと思うくらいいつもより豆だった。特に私は父上の葬儀を執り行う、次郎ちゃんのキャラデザが完璧すぎて大好きでした。衣装もそうだけど、メイクもこのシーンだけ違くて、すべての責任を背負って奥華を継ぐ覚悟を決めた顔をしてることも相まって見るたびいつも「顔がイイ…」と呟いていました。優馬くんほんとに時代物の衣装すごく似合うので、これからも積極的にして欲しいです。


やばい、キャラデザだけでこんなに書いてしまった。もっと中身のあること書きたいのに一生終わらないコレ…。
まあこんな感じで一人一人が魅力的なんですが、私はそれぞれの関係性がものすごく好きなんですよね。

例えば、九郎と次郎。さっき玄九郎について陽の性質だと言いましたが、それと対照的に描かれているのが次郎で。玄九郎が太陽だとしたら、次郎は月で。おばかな玄九郎と、真面目な次郎。豪快な玄九郎と臆病な次郎。静と動。そしてラストは生と死。すべてが対照的なこの二人が兄弟という間柄なのがものすごくエモいんですよね…真逆だけどお互いを尊敬して認めて、お互いにない部分を補ってることにすごく絆を感じる。だから生と死が二人を分けてしまったけど、不思議と寂しさを感じなかった。消えていく玄九郎を見送って力強く頷く次郎に、玄九郎が重なって見えて。身体が消えた分、魂が次郎に移ったような不思議な感覚でした。特に令和版、ものすごく兄弟の一体化を感じてグッときた。きっと中の人たちも距離を縮めたからだと思うのですが、令和版のその濃度は凄かったなあ…。


そしてこの九郎と次郎の兄弟と、対照的なのが秀衡と十三の兄弟なんですよね。次郎と十三、同じ弟なのに圧倒的に兄に感じている劣等感が違う。「自分とは違う」と感じていることは一緒なのに、次郎はそこに尊敬が混じって、十三はそこに嫉妬が混じっている。この兄弟の対照も人間の業を描いていて、それを思うと十三の最期にも胸がギュッとなった。

他にも秀衡と九郎。牛若と九郎。黄泉津と次郎。静歌と九郎。静歌と次郎。海尊と九郎。好きな関係性がありすぎて、語れない…。それぞれがそれぞれを映し出す鏡で、誰かと生きていくことで、自分という存在を感じているこの人たちが愛しくてしょうがないです。九郎は自分は空っぽだ、偽物で本物だと言っていたけれど、案外みんなそんなもんで、誰かという鏡に映って初めて自分を認識する、生きるとは誰かの心に映ることなんだなと九郎を見ていて思いました。そう考えると、義経でもあり、玄九郎でもあり、九郎でもあり、兄上でもある奥華九郎国衡という男はたくさんの人に寄り添って、誰かと生きた人なんだな。誰かを映すことで孤独から抜け出して光を見つけた、最期の九郎が私は大好きでした。

最後に優馬くんについて。あんだけ演劇お化けがたくさんいる中で、主人公の弟という大事なポジション。初新感線にして、すごいプレッシャーだろうなと思っていましたが、幕が開くとめちゃくちゃ走ってた。しっかり新人の扱いらしく、舞台を動き回っていて久しぶりに優馬くんからフレッシュさを感じました。
役については、優馬くんを長く見ている人ほどすぐに察したと思う。あ、また何か背負うなこれは…という早い段階からの気づき。主演もいっぱいしたことある人なのに、いつまでたっても圧倒的な主人公の横でグルグル考えてる役が似合うよね、めちゃくちゃ主人公顔なのに不思議…。そしていよいよ背中が定員オーバーになりそうな勢い。


そんな色々背負って生きる、残された側である次郎ちゃんですが、平成版の時はやっぱり周りが演劇お化けだらけだったので、どうしても印象が残らないこともあって。真面目に頑張る役なのでそれもすごく次郎ちゃんだったんだけど、令和版ではより一層強くなった次郎ちゃんで、ものすごく存在感が増してたんですよね…。空いた夏秋の間に次郎ちゃんをすっかりブラッシュアップさせていた優馬くんにうっかり泣きそうになりました。

次郎ちゃんの一番好きなセリフが、九郎と秀衡の戦いを見守りながら言う「逃げるな頼朝!奥華は滅ぶ。残るのはお前だ。だからせめてその散り際、しっかり見届けろ!」なんですけど、このセリフも平成版と令和版で重みが全然違って。奥華一族の最後の当主としての覚悟と責任をより一層強く感じて、ますます好きなシーンになりました。

平成版では大陸の王なんてまたまた…っていう心許なさがあったのに、一年経ったらしっかり現実味を帯びた大陸の王の顔してるんですもん…。絵空事に聞こえなくて、あれ絶対統一する顔じゃん、静歌を守りながら生きる男の顔じゃん。と容易に想像出来て続編が見たくなった。大陸の王編しようよ、奥州藤原氏のあとはチンギス・ハーンしようよ。


平成版を経て、令和版では重要なシーンが増えていたり、殺陣の手が増えていたり、きちんと新感線やいのうえさんの信頼を得ているの嬉しかった。一年空けて見るとそのまま優馬くんの成長が分かったり、ブラッシュアップがされていたりで、すごく面白い公演形態だったなと思いました。そして、きちんと一年かけて役の理解度を深めて、存在感をしっかり示した優馬くんのこと、物凄く頼もしく感じました。

だからこそ、最終地である福岡で次郎ちゃんはどんな千秋楽を迎えるんだろう、どれだけ研ぎ澄まされた状態で博多座に立つんだろうと楽しみにしていたので、本当に寂しかった。大阪、金沢、松本、東京と経て1年間の集大成を見るのを楽しみにしていたから、心にポッカリ穴が空いた。でも博多座さんの手厚い歓迎や、万全の体制を整えてくれていた気合を見て、もっと悔しい人がいるのだなと感じました。そして、あのノボリがはためいているところを絶対見たい、とも。

私にとっても、優馬くんにとっても初めての劇団☆新感線。こんな形で幕が下りるなんて、大阪公演を見てる時には想像もしていなかったけど、でもなにより誰も感染者を出すことなく、怪我をすることもなく、欠けずに幕を下ろせて良かったなと思います。そして一公演でも見れて良かった。今回はこんなご時世も相まってなんだかより一層、演劇に触れる喜び、幸せを感じた作品でした。改めて大変な状況の中、万全の対策をしながらエンターテインメントを出来る限りまで届けてくださって、ありがとうございました。とんでもなく最高にハッピーで、元気をもらった初劇団☆新感線でした!ただ不完全燃焼だったので、是非また優馬くんにリベンジさせてください!!!!なんでも次の仕事に繋げるで有名な優馬くんなので期待しています!!(言霊)

今こんな事態では、エンターテイメントは必要不可欠ではないと排除されてしまいますが、身体は元気に生活できても心の栄養が不足するなと、取り上げられて初めて痛感しています。身体と心のバランスが取れなくて、当たり前がなにひとつない日々に落ち込むたびに、元気にしてくれるのは優馬くんの何気ない近況報告だったり、優馬くんが演じた誰かの言葉だったり。特に「下向かない。上向いて、胸張って、前!」は毎日思い出します。そんな、少しの栄養剤が、なんとか私を毎日動かしています。

なので、今はとにかくエンターテイメントを楽しめる、優馬くんが思い切り仕事を出来る、平和な世の中に早く戻れるように出来ることをします。正直明日すら、1日先のことすら、曖昧で見えない日々ですが、優馬くん含め推しも同じ世界に生きて頑張ってると思うと、次会えた時の何百倍にもなった喜びを想像すると、とりあえず明日は頑張ろうと思うので、その日々を積み重ねていきましょうね。いつか思い出して、あの時頑張ったなあと自分を褒められる日が早く来ますように!

とにもかくにも、偽義経冥界歌、これにて閉幕!!

出来ればまた会えることを願います!!39!!!!!!!