君の名は希望

優馬くんの名前は希望と今 知った

ドリアン・グレイの肖像【8/22】

優馬くんの初主演舞台もいよいよ東京凱旋公演を残すのみとなり、DREAM BOYSも幕が上がった。
優馬くんがドリアンとして生きるのは残り少なくなり、ひしひしと寂しさを感じる中、思い出したようにドリアン・グレイ大阪初日のメモ書きを、文章に残しにきた。
もう完全に私の記憶を残しておくための覚え書きである。

この前のドリアングレイの記事は全体的な感想と、自分が何を感じたかを書いたので、今回は細かなシーンとか好きなセリフとかを残しておこうと思う。

  • 一番最初のシーン

ドリアンがハープシコードを弾き始め、劇場の壁に影が出来て、美しい横顔が映し出される。
その横顔にただただ見とれていたら、弾き終わったドリアンは子どものような無邪気な笑顔で「この楽譜を貸してくれないか!」と声を発する。
底抜けに明るくて、屈託のない無垢なドリアン。
何にも染まらない真っ白いドリアンが、真っ白な布に包まれる美しさも好きだ。

  • ハリーと誘惑について語るシーン

誘惑に負け衝動に身を任せることこそが、誘惑に勝つ唯一の方法だ、と持論を展開するハリーが、ところどころでドリアンの身体に触れる。そのシーンが好きだ。
裸に布を巻いただけのドリアンの鎖骨や肩に、ススッと這うハリーの綺麗な指に勝手にドキドキしている。
トントンと叩いたり、撫でるようにする手つきが何故かイケないモノを見てしまったような気分でソワソワするのは多分自分だけである。

  • リトルメロディー

小さな芝居小屋でシヴィルと出会い、シビルの才能と美しさに恋をしたドリアン。
シビルを見つけたときのパッと明るくなる表情や、目を細めて眩しそうに見つめるドリアンはヲタクと通ずるものがあると思ってしまった。そして楽屋に招かれて、出会う2人にはどこか甘美で刺激的な雰囲気が漂う。
美しく才能に溢れるシビルが、客席に佇むこれまた美しく気品溢れるドリアンを「あなたはパアッと輝いているんですもの!」と評す。もうこの美しさたちは出会うべくして出会ったのだとしか思えない。
そんな中、シビルの魅力を語り始め酔いしれるようにハープシコードの前に座ったドリアンの指が鍵盤で踊り始める。
そして静かに始まる、リトルメロディー。
この瞬間がたまらなく好きだ。
ゆっくり優馬くんの静かで落ち着いた声が聞こえ始める。
「君なんだね 運命の花 風に揺れ 優しく」
穏やかで優しい音色と、少し色気のある湿っぽい声がとても合っていていつもうっとりしてしまうのだ。
これだけのために映像化して欲しいくらいだ。

  • ドリアンが、ハリーにシビルについて語るシーン

無邪気に、声高らかにシビルの素晴らしさについて語るドリアンを、楽しそうに見つめるハリー。
ハリーが意地悪そうにドリアンに囁くと、怒ったように「ちゃかさないでくれ!」とイスから立ち上がるドリアンの純粋さが際立つのも好きな理由である。
「僕にとって彼女に触れることは、彼女の芝居を見に行くということだ!僕は生きてる限り毎日芝居を見に行くだろう!」は、もう完全に優馬担と握手案件のヲタクっぷりでちょっと笑えたのはご愛嬌ということで。
でもこのシーンで一番好きなセリフは、
「僕はロミオを嫉妬に狂わせたい!!!」だ。
なんてロマンチックなセリフなんだろう。
このセリフをハリーの腕を掴みながら、無邪気に楽しそうに言うドリアンは、最高に可愛くて最高にロマンチストで、恋に恋していて大好きだ。
あとその後に劇場に行こう!とくるくる回りながら腕を引っ張って、ハリーにたしなめられるドリアンも、最高に子どもで最高に無邪気でまっさらな美しさしかなくて大好きだ。

  • シビルに失望するシーン

バジルとハリーの3人で芝居小屋に行くときの、ピンクの衣装が一番好きだ。
いつもより少しおめかししているのに、それに似合わず子どものようにワクワクしているのがなんとも可愛くて余計に好きなのだ。(ちなみに2番目に好きなのは、初めて芝居小屋に言った時の白のタキシードに中の服が青い衣装。)
その私の大好きな衣装で、ドリアンは初めて破滅への道をたどる。
演技が出来なくなったシビルに、失望し、非情なまでの感情をぶつけるドリアンはやっぱりまだ子どもで、コントロールの出来ない感情は幼いと思った。
それでも彼が彼女の才能を愛していたのは本物で、だからこそのここまでの怒りなんだろうと思った。皮肉にも、ここで彼が愛したのはシビル・ヴェインではなくシビル・ヴェインの「才能」と「美しさ」であったと分かる。
彼が執着したのは「美しさ」で、美しさに恋をしているんだとドリアンの闇が見え隠れした気がした。
このシーンで一番好きなセリフは、
「芝居?それは君に任せたよ。たいそうお上手だからねえ!!?!」だ。
特に最後の叫ぶような「たいそうお上手だからねえ!!?!」はドリアンの失望と、シヴィルの絶望が一気に襲ってくる気がして胸が痛くなるけど、たまらなくドリアンが非情で残酷でゾクゾクする。
同じ理由で「触らないでくれ!!!!」も大好きです。優馬くんのこの怒りの演技が大阪はより丁寧に見えた。
特に夜(2部)は、本当に心から蔑むような、汚いものを見るような瞳と、吐き捨てるような「触らないでくれ!!!!!!」に大興奮してゾクゾクした。私もあんなに拒絶されるような「触らないでくれ!!!!」を浴びたい。

ここから2幕に入りますが、この時点でドリアンは18年の時をすでに生きていて成熟した大人になっている。
訪ねてくるバジルは、ちゃんと18年の年を重ねているのに、ドリアンは若々しい20代の頃からまるで変わっていない。ハリのある肌といい、艶やかな髪の毛といい何一つ衰えていないのだ。
でも表情はまるで違うような気がした。
何かを含んだような笑い方や、馬鹿にしたような目つき、悪意のこもった言葉たち。それらは全部醜いもののはずなのに、ドリアンから発せられるとどこか上品で優雅に見えるのはやはりその若さと美しさ故なんだろうなとより美しさの説得力が増していた。
でもこのシーンの一番好きなセリフは、
何気ない、関係のないセリフだ。
「ビクター」この一言。
バジルが「灯りも頼む。ドリアンの顔が見たいんだ。」と懇願したときに、呆れたように手を上げてドリアンが呼ぶこの一言。
呆れと諦めのようなため息まじりの呼びかけがすごく好きだ。なぜかここに一番ドリアンが重ねた年を感じてしまった。
しかし、長年疎遠になってしまっても「顔が見たいんだ」と懇願してしまうあたり18年経っても、バジルのドリアンに対しての崇拝も何も変わってなくて罪深い。
そんなバジルの印象に残っているセリフは、
「僕は君を崇拝しすぎた。今その罰を受けているんだ。」一択です。
究極の懺悔であり、取り戻せない過ちであると気づくのが遅いのも芸術家であるバジルらしいと思う。バジルはバジルでドリアンのことを、芸術品だと思い込み過ぎたのだ。

  • バジルを殺してしまうシーン

短剣を迷いもなく振りかざすドリアンは確かに狂っていた。
私がみた18日の東京千秋楽と大阪初日はさほど日にちが空いたわけではなかったのに、18日とは違うドリアンがいた。
短剣を何度も何度も刺して、最後に脈を測るドリアンはなんの躊躇いも、罪悪感もなさそうでちょっと身震いした。この短期間で優馬くんはこのシーンにどんな感情を足したんだろうとゾクゾクした。
そしてこの後のビクターを叫ぶように呼ぶドリアンもどこか狂っていて、怖いのになぜか目が離せないような魅力があった。
ちなみにこのシーンの好きなセリフは、
「さあ行こう!華の都パリへ!!」だ。
最高に狂ってる。もう死んでいるはずのバジルへ話しかけ、力強くそう叫んで愉快そうに笑うドリアンと、陽気な音楽と、明るくなっていく舞台に最高に狂気を感じた。

  • 阿片窟でアランと言い争うシーン

この時に着ているマントも最高に好きだ。
周りを気にしながら阿片窟に入り、アヘンを燻らすドリアンもとても最高だ。
フードから見え隠れする美しい顔が、アヘンに酔いしれる表情がたまらない。
恍惚そうに瞳を閉じて煙を上げる姿は最高にエロい。エロい、なんて安い言葉で片付けてはいけない気がするけど、それ以外の言葉で表すと生々しくなりそうなくらいだ。声を荒らげるアランに不愉快そうに眉をひそめる顔も、その後すぐに快感に溺れる顔も、何もかも最高だ。
これほど美しく堕落していく姿を見ると、これはもう一種の芸術なのではないかと錯覚して、崇めたくなってしまう。

ここはもう芸術作品だと思っている。
堕落に堕落を重ね、底辺まで堕ちたであろうドリアンが狂ったようにハープシコードを弾き続け、その周りに男や女、美しさの代償に失った人々などが取り囲む。
幻想的で、エロティックな雰囲気の中にいるドリアンは最高に美しくて最高に綺麗だ。
アヘンを吸い煙を燻らせながら、快楽に沈んだあと、気怠さを取り戻したようになる表情が最高に狂っている。好きしかない。
でも、このシーンはあまり言葉を並べたくない。どんな言葉を並べても陳腐で安いものにしかならない気がして。どんな言葉を使ってもこのシーンの美しさは表せない気がして。
とにかく、このシーンは目で見て耳で聞いて五感で感じたい。

  • ハリーとドリアンの最後のシーン

ここはもっと公演を重ねてから見たいシーンぶっちぎりで1位です。
私が見た時は、まだ少し物語に溶け込んでない気がしたからだ。私の理解力や、感受性が乏しいせいでもあるが、ハリーがこの時何を考えているのか、ドリアンはこの時どう思っているのかそれが読み取れなくて、でもこれが読み取れたらもっとドリアングレイの世界に浸れる気がしてもどかしかった。
もっと公演を重ねればまた違うもっと濃厚なシーンになるのではないかと思うので、このシーンを見るためだけに全ステしたかったくらいには好きだ。
でもここは、好きなシーンなのにあまり言葉に出来ない。もっと詳しくいえば言葉にするほど噛み砕けてない。
だけどうっすらと思うのは、ハリーはドリアンの罪にも罪悪感にも気づいていたのではないか、ということ。それでいて何も言わなかったのは最後まで興味の対象だったからなのではないか、ということ。ドリアンの最期にも興味があったから最後まで興味の対象として見続けたような気がする。いろんな人の感情を集めたドリアンだったけど、ハリーの感情が一番遠かったと思う。一番ドリアンに影響を与えたけど、一番ドリアンから遠かったのもまたハリーだと私は思っている。
でも、最後のシーンは。ドリアンを呼び止めて、2人で手を取って踊るシーンだけは。
なぜかすごく泣きたくなって、切なくなって、儚さと刹那感がすごいから、そこに柔らかな愛情も感じてしまうんだよなあ。
ハリーはドリアンを結局どう思っていたのか。ただの興味の対象だったのか。それともドリアンの美しさに魅了され翻弄された1人でもあったのか。私には噛み砕けなかったのが心残りである。 
でも噛み砕けないのに好きだと思うのだから、自分の中で答えを見つけていたら多分その場で号泣していたと思う。

  • 肖像画に刃を向けるシーン

一番最後のクライマックス。
あのマントを身にまとい、フードから美しい顔をちらつかせ、肖像画に短剣を突き刺すドリアンは悲痛だった。
このシーンで好きなセリフは、
「過去を殺そう!」だ。
何度も罪悪感に苛まれ、自責の念にかられたドリアンはついに今までの自分と決別する勇気を持つ。そういう意味での「過去を殺そう」だとしたら、大きな覚悟を感じてただただ泣きそうになってしまう。この後の末路を知ってるが故に胸が痛くてしょうがなくなる。
短剣を刺す前のドリアンがあまりにも美しくて、悪事を重ねたとは思えないほど綺麗で、あの美しさが失われるという意味でも悲しくて悲しくて胸が苦しくなる。
この時にいっせいに今までのドリアンがフラッシュバックして、無邪気で純粋で無防備で無垢で幼かった時のドリアンも浮かんできて、いたたまれない気持ちになって苦しい。
そんな最後だったけど。美しさを愛した人が一番醜い最期を迎える皮肉な最後だったけど。
ビクターが肖像画に向かって誇らしげに「これが私のご主人、ドリアン・グレイ様です。」と言ったことで少しだけ救われた気がした。ドリアンはビクターのおかげで最後まで美しいドリアン・グレイとして生きられたんだとそんな気がした。

さて、好きなシーンを並べるとこんなに壮大な記事になるとは誰が思ったでしょうか。怖い。自分が怖い。
まとめの総括まで書こうと思ったけど、これ以上の文量は、後で自分で読み返したときに頭が捌ききれない気がするのでまた今度にする。

とりあえず千秋楽まで、最後まで、無事に優馬くんがドリアンとして生きられますように。